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この記事の要点
- 外国人材の住まいを用意する方法は大きく4つ。社宅を借り上げる/寮を自社で持つ/本人に任せる/外国人対応の専門サービスを使う。
- 本人に任せる方式は一見コストゼロだが、初期費用が家賃の5倍前後かかるため、入社前の外国人が自力で用意できず、結局は会社が立て替える例が多い。
- 家賃78,000円の部屋を一般の賃貸で契約すると、初期費用は合計395,300円。敷金・礼金・仲介手数料・保証会社費用が積み上がる。
- 専門サービスを使う場合、初期費用は3万円〜5万円程度に収まる例がある。1年間で見ると差は大きい。
- どの方法にも向き不向きがある。採用人数・在籍期間の見込み・勤務地が固定かどうかで選ぶのが現実的。
なぜ「住まい」が採用の最後の関門になるのか
外国人材の採用が決まったあと、実務でいちばん時間を取られるのが住まいの手配です。在留資格の手続きは行政書士に依頼できますし、雇用契約は既存のひな形を翻訳すれば足ります。ところが住まいだけは、外部に丸投げしにくく、しかも本人が自力で解決できないことが多い。
理由は単純で、日本の賃貸契約が「日本での生活実績」を前提に組まれているからです。連帯保証人、日本の銀行口座、日本の携帯電話番号、住民票。来日直後の本人はこのどれも持っていません。書類が揃わなければ保証会社の審査に出すことすらできず、審査に出せなければ入居できない。ここで手続きが止まります。
結果として、多くの企業が入社直前になって慌てることになります。この記事では、企業側が取れる選択肢を4つに整理し、それぞれのコストと向き不向きを比較します。
方法1:社宅として会社が借り上げる
会社が賃貸借契約の名義人になり、従業員に転貸または使用させる方式です。もっともよく使われます。
利点は、審査のハードルが一気に下がることです。契約者が法人なので、本人の在留資格や勤続年数を理由に断られる場面が減ります。家賃を給与から控除できるため、滞納リスクも実質的に消えます。
難点は、初期費用と退去時の負担を会社が負うことです。次の章で見るとおり、1部屋あたり40万円近い初期費用がかかります。加えて、その社員が短期間で退職した場合、契約期間の残りと原状回復費用が会社に残ります。転勤や配置転換で勤務地が変わった場合も、そのたびに解約と再契約が発生します。
方法2:自社で寮を保有・運営する
一定人数以上を継続的に受け入れる企業では、寮を持つほうが1人あたりコストは下がります。製造業や介護分野でよく見られる形です。
ただし、寮の運営は不動産事業に近い実務を伴います。設備の維持、入退去の管理、共用部の清掃、住民トラブルの対応。これを本業の片手間でやると、担当者の負荷が想像以上に大きくなります。人数が読めない段階で寮を建てる・借りるのは、固定費を先に確定させる判断でもあります。
また、寮を出たあとの受け皿を用意していないケースが目立ちます。技能実習から特定技能へ移行したタイミングや、転職して寮の対象から外れたタイミングで、本人が突然「日本で自力で部屋を探す」状況に置かれる。ここは後述します。
方法3:本人に任せる
「住居手当を出すので自分で探してください」という方式です。会社の手間はもっとも少なく、書類上のコストもゼロに見えます。
問題は、来日前後の本人にはこれが実行できないことです。物件を内見できない、保証人を立てられない、銀行口座がない、日本語で条件交渉ができない。そして何より、初期費用の現金を持っていません。
家賃78,000円のワンルームを一般的な条件で契約した場合の内訳を見てください。
横にスクロールできます →
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 敷金(家賃1か月) | 78,000円 |
| 礼金(家賃1か月) | 78,000円 |
| 仲介手数料 | 85,800円 |
| 前家賃 | 78,000円 |
| 火災保険料 | 20,000円 |
| 鍵交換費用 | 16,500円 |
| 保証会社利用料 | 39,000円 |
| 合計 | 395,300円 |
家賃の約5か月分です。来日したばかりの本人がこれを用意できることは、まずありません。結果として会社が立て替えることになり、「本人に任せる」という前提が崩れます。しかも立替金の回収は、退職されると回収不能になります。
確認したいこと
立替金を給与から控除する場合、労働基準法第24条の賃金全額払いの原則との関係で、労使協定などの手当てが必要になることがあります。運用を決める前に社会保険労務士に確認してください。
方法4:外国人対応の専門サービスを使う
近年増えているのが、外国人入居を前提に設計された住居サービスを使う方式です。家具家電付きで、保証人不要、初期費用を定額に抑えている事業者があります。
企業側から見た利点は3つあります。
- 初期費用が読める。 一般賃貸の395,300円に対し、事業者によっては3万円〜5万円程度で入居できる設計になっています。予算計上がしやすくなります。
- 来日前に契約できる。 WEB完結型なら、本人が母国にいる段階で部屋を確定できます。来日初日から住む場所がある状態を作れます。
- 配置転換に追随しやすい。 事業者によっては拠点間の移動を無料で認めており、勤務地変更のたびに解約・再契約をしなくて済みます。
一方で制約もあります。エリアが事業者の物件所在地に限られること、年齢制限を設けている事業者があること、そして家族帯同には向かない物件が多いことです。単身の若手を継続的に受け入れる用途に向いた選択肢だと考えたほうが実態に合います。
4つの方法を比較する
| 方法 | 初期費用 | 会社の手間 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 借り上げ社宅 | 1部屋あたり約40万円 | 中 | 少人数・勤務地が固定 |
| 自社寮 | 大(固定費化) | 大 | 同一拠点で継続的に多数受け入れ |
| 本人に任せる | 実質は会社が立替 | 小に見えて大 | 日本での生活歴がある人材のみ |
| 専門サービス | 3万〜5万円程度 | 小 | 単身・来日直後・勤務地が変わりうる |
1年間のコストで見るとどうなるか
家賃78,000円の部屋を1年間借りた場合と、月額38,000円台から用意されている専門サービスを1年間使った場合を並べます。
| 一般賃貸 | 専門サービス | |
|---|---|---|
| 初期費用 | 395,300円 | 50,000円 |
| 家具家電の購入 | 別途必要 | 不要(付属) |
| 1年目の総額 | 1,248,000円 | 506,000円 |
| 差額 | 742,000円 | |
1人あたり74万円の差です。5人採用すれば370万円になります。もちろん部屋の広さや立地は同条件ではありませんから、この数字をそのまま「安いほうが得」と読むべきではありません。ただし、住居費の設計を最初に決めておくかどうかで、採用にかけられる予算がここまで変わる、ということは押さえておく価値があります。
選ぶときの判断軸
方法そのものに優劣はありません。次の3つで決まります。
1. 在籍期間の見込み
3年以上の在籍が見込めるなら、初期費用を会社が負担しても1人あたりでは回収できます。1年前後で入れ替わる想定なら、初期費用の重さがそのまま損失になります。
2. 勤務地が動くかどうか
配置転換が前提の職種で借り上げ社宅を使うと、異動のたびに解約違約金と再契約の初期費用が発生します。拠点間移動を許容する事業者を使うほうが、総額では有利になることがあります。
3. 単身か家族帯同か
家族を呼び寄せる予定があるなら、ワンルーム前提のサービスは早晩合わなくなります。最初から一般賃貸の借り上げで設計したほうが、二度手間になりません。
よくある質問
外国人だからという理由で入居を断られることはありますか。
実務上は起こります。ただし断っているのは物件のオーナーであることも、管理会社の判断であることも、保証会社の審査結果であることもあり、原因を切り分けないと対処ができません。この点は別の記事で詳しく扱っています。
住居手当は課税されますか。
支給の形態によって扱いが変わります。現金支給の住宅手当は原則として給与として課税対象になり、社宅として貸与する場合は一定の賃料相当額を本人から徴収していれば給与課税されない扱いがあります。設計の前に税理士に確認してください。
来日前に部屋を決めることはできますか。
WEB完結で契約できる事業者を使えば可能です。一般の賃貸仲介では内見や来店を求められることが多く、来日前の契約は難しいのが実情です。
年齢制限のあるサービスがあると聞きました。
事業者によっては入居対象を一定の年齢層に限定しています。たとえば18歳から49歳までを対象とするサービスがあります。中堅・シニア層の受け入れには使えないため、事前に条件を確認してください。
まとめ
外国人材の住まいは、採用が決まってから考えるとほぼ確実に間に合いません。在留資格の申請と並行して、住居の方式を先に決めておくのが唯一の対策です。
人数が読めず、勤務地も動く可能性があり、単身の若手が中心——という条件であれば、初期費用が定額で来日前に契約できる専門サービスが現実的な出発点になります。人数が固まり、拠点も固定されてきた段階で、借り上げ社宅や自社寮に切り替えていく。この順番のほうが、いきなり固定費を抱えるより失敗が少ない選択です。
記載の金額は執筆時点の一般的な相場をもとにした試算であり、実際の費用は物件・エリア・時期によって異なります。契約前に必ず最新の条件をご確認ください。